この記事の要点
いじめを受けた子どもに『先生には言わないで』と言われたとき、すぐ密告する・秘密を抱え込むの二択にしない対応を解説。恐れていること、安全の線引き、相談相手と伝える範囲の決め方を具体例で整理します。
子どもが勇気を出していじめを話した後、「でも、先生には絶対言わないで」と頼むことがあります。保護者は、約束を守らなければ二度と話してくれないのではないか、黙っていれば被害が続くのではないかと、二つの不安の間で迷います。
「すぐ先生に全部伝える」か「家庭だけで秘密にする」かの二択にせず、まず子どもが何を恐れているかを聞きます。緊急の対応が必要と思われる場合を除き、本人に見通しを示しながら、誰へ何を伝えるかを小さく整理します。
「言わないで」の後ろにある不安を聞く
「先生に言うのが正しい」と説得する前に、次のように聞きます。
子どもが恐れていることには、例えば次のようなものがあります。
- 相手に「告げ口した」と知られ、仕返しされる
- クラス全員の前で話題にされる
- 相手とその場で向き合わされ、仲直りを求められる
- 先生に軽く扱われる、信じてもらえない
- 友人関係や部活動でさらに孤立する
- 親が怒鳴り込んで大ごとになる
- スマホを没収され、つながりを失う
「そんなことは起きない」と否定せず、「それが心配なんだね」と一度受け止めます。恐れの中身が分かれば、学校への依頼に「本人同士の対面は事前相談なしに行わないでほしい」「本人への聞き取り方法を先に保護者と相談してほしい」など、具体的な安全条件を入れられます。
約束は「結果」ではなく「進め方」にする
進め方として伝えられること
- 緊急対応が必要な場合を除き、誰に何を伝えるかをできるだけ先に相談する
- 共有先と理由を本人へ説明する
- 相談後、確認できたことと次の予定を本人へ説明する
- すべてを一度に話すよう迫らない
- 相談後に新しい心配が出たら進め方を見直す
約束しないこと
- 何が起きても誰にも言わない
- 必ず相手を処分させる
- 明日には必ず解決する
- 絶対に仕返しされない
結果や期限は保証できません。本人に説明せず話が進む場面を減らし、相談の各段階で共有先と次の予定を確かめる、という進め方を伝えます。
安全の線引きを子どもに伝える
落ち着いているときに、例外を具体的に説明します。
この会話例は法的な秘密保持の判断ではありません。緊急の対応が必要と思われる場合は、本人の同意だけで家庭内に留めるのではなく、公的な緊急窓口へ連絡し、「今から誰に、何を、なぜ伝えるか」を可能な範囲で説明します。緊急性を本記事だけで判断できないときは、公的相談窓口へ状況を伝えて確認してください。
相談を「小さな一歩」に分ける
先生という言葉だけで拒否が強いときは、相談相手の選択肢を広げます。
- 担任以外の養護教諭、学年主任、部活動顧問など、本人が話しやすい教職員
- 在籍校に配置されている場合は、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー
- 教頭・校長、学校いじめ対策組織の相談窓口
- 学校外の公的相談窓口
- 本人が信頼する親族や地域の大人
文部科学省の基本方針では、相談を受けた教職員は、いじめに係る情報を速やかに学校いじめ対策組織へ報告し、組織的な対応につなげることとされています。したがって、学校の教職員へ具体的な相談をした後、その情報をその教職員一人だけに留めることは前提にできません。最初に、校内で誰まで共有されるか、本人へどのように説明するかを確認します。
次のように、本人が選べる部分を示します。
学校や相談窓口がどこまで対応できるかは、伝える情報や窓口によって異なります。「匿名のまま同じ対応を受けられる」とは約束せず、個人情報を伝える前に、利用条件、記録、共有範囲を確認します。
学校へ伝える前に整理する6項目
- 最初に伝える相手:担任、養護教諭、管理職など
- 最初に伝える範囲:困っている場面、安全上の懸念、本人の言葉
- 相談に不要と考える情報:関係のない個人的事情など。共有の可否は学校へ確認する
- 避けてほしい対応:突然の対面、クラスでの公表、単独での長時間聞き取りなど
- 当面の安全策:席、休み時間、登下校、部活動、別室など
- 本人への説明方法:誰が、いつ、どこで説明するか
すべてを希望どおりにできるとは限りません。学校側の組織的な確認や情報共有があることを説明し、本人が予測できない進め方を減らします。学校側の手順や共有範囲は学校ごとに確認してください。
連絡文はいじめを学校へ伝えるメール・面談依頼の例文、面談前の整理は学校面談の準備チェックリストを利用できます。
子どもがまだ同意しないとき
緊急の対応が必要と思われず、子どもが学校への相談に同意しないときは、結論を急がず、次に話せる条件を整理します。
- 毎日決まった時間に短く体調と安全を確認する
- 子どもが安心して過ごせる場所・大人を増やす
- 保護者が見た変化を、推測と分けて記録する
- 学校外の公的相談窓口で、個人情報を伝える前に相談方法と選択肢を尋ねる
- 「気持ちが変わったらいつでも言える」と伝える
- 次に話す日時を決め、何度も追及しない
資料がなくても、相談を始めることはできます。写真やメッセージの保存方法、今から残せる記録、相談の順序は、いじめの証拠がないときに親ができることで確認できます。
親だけで避けたい行動
- 子どもに知らせず学校や保護者グループへ一斉送信する
- 相手の子や保護者へ突然連絡・訪問する
- 実名、学校名、画像、アカウントをSNSで公開する
- 「先生に言えないなら我慢するしかない」と突き放す
- 仕返しや報復を勧める
子どもの信頼を守ることと、安全のために支援を求めることは、必ずしも反対ではありません。事前説明、伝える範囲の合意、相談後の報告を重ねることが、両立への現実的な道筋です。
相談先
- 緊急の危険:110、119
- 文部科学省「24時間子供SOSダイヤル」:0120-0-78310
- 文部科学省「子供のSOSの相談窓口」
- 法務省「こどもの人権110番」:0120-007-110
- こども家庭庁「相談窓口」
本記事は一般情報であり、個別事案の危険度、法的評価、医療上の判断、学校による認定を行いません。窓口の利用条件や受付時間は、リンク先で確認してください。
伝える範囲を三つのメモに分ける
「言う・言わない」の二択にせず、情報を三つのメモに分けます。これは法律上の秘密区分ではなく、相談前に本人の希望と保護者の懸念を整理するための例です。
- 緊急性を確認する情報:「死にたい」という訴え、行方不明、いま起きている暴力など
- 相談方法を決めてから扱う情報:本人の言葉、相手や目撃者に関する情報
- 相談との関係を確認する情報:私生活、友人関係、属性情報など
学校へは、「校内で誰まで伝えるか」「本人へどう確認するか」「次に誰が本人へ説明するか」を尋ねます。新たな共有が必要になった場合は、可能な範囲で理由と共有先を本人へ説明します。
情報確認日:
情報源
- 文部科学省「いじめの防止等のための基本的な方針」
- 文部科学省 令和8年3月19日「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」のチェックリストを活用した平時からの備えに関する点検の調査結果及びこれを踏まえた対応について(通知)
- 文部科学省「24時間子供SOSダイヤル」
- こども家庭庁「相談窓口」
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」
- 警察庁「都道府県警察の少年相談窓口」
情報確認日:2026年8月27日。制度や窓口は変更されることがあるため、利用時はリンク先の表示を確認してください。